リリース及び展開管理は変更したサービスを本稼働させるためのプロセスです。
本書ではリリース及び展開管理の目的、活動内容を説明します。
リリース及び展開管理の目的
リリース及び展開管理の目的は一言でいうと「変更を確実に実装する」ですが、もう少し細かく書くと次の内容があります。
- 本番環境への影響を最小化
本番環境でのサービス停止や障害のリスクを最小限に抑えつつ実装 - スムーズな実装
余計な時間や手間をかけずに実装 - リリースの追跡性・再現性の確保
リリース及び展開管理の開始タイミング
リリース及び展開管理は、変更管理で承認されたサービスがリリースパッケージとして作成・登録された時点で開始します。
複数の変更管理での活動がある場合、それぞれの活動に対しリリース及び展開管理をプロセスをする単体リリースや、複数変更の統合リリースをする場合もあります。
■単体リリース

■複数変更の統合リリース

リリース・リリースパッケージ・展開
ITILではリリースを「提供するもの(サービスなど)を用意する」、展開は「提供方法」としています。

一般的には新サービスなどを本環境へ移送することを「リリース」と呼びますが、ITILではリリース、展開で分けています。
リリースは複数で構成されることもあります。
本番環境への新サービス適用はシステム停止を伴うことが多いので、ひと月に1回システム停止をさせてもらってリリース及び展開をするというケースが多いです。
その場合、溜まっていたリリースを一気に展開します。
個々のコンポーネントをリリースユニットと言い、このリリースユニットをひとまとめにしたのがリリースパッケージです。

リリース及び展開管理の活動内容
リリース及び展開管理の活動内容(プロセス)はプロジェクトや規模によって異なることもありますが、「①計画立案 → ②リリース設計 → ③リリースの受け入れ試験 → ④展開計画・手順作成 → ⑤周知、トレーニング → ⑥展開 → ⑦レビュー・クローズ」となります。

ここからフェーズごとの活動内容を説明します。
①計画立案
計画立案は次の内容を決めます。
- 目的
例:優先度が高となっていた新サービス、月次のOSパッチを本番環境へ適用する。 - リリーススコープの定義
リリースするサービスを決めます。
例:以下3つを対象とする。
①○○機能の改修(変更管理番号:XX)
②□□機能の追加(変更管理番号:XX)
③X月リリース分OSのパッチ - スケジュール
リリースするサービスの内容を考慮してスケジュールを作成します。
この後のリリース設計、リリースの受け入れ試験などのプロセスの実施日を可能であればガントチャートで作成します。
- 他システムとの調整
本システムと連携している△△システム側に影響が出ないよう本番環境への実装をする。
②リリース設計
リリース設計では、リリースユニット(モジュールやデータベースオブジェクト、ドキュメント等)、手順を作成します。

手順は担当部門や想定時間などを書いておくとこの後の作業がスムーズになります。

③リリースの受け入れ試験
検証環境(ステージング環境)を利用して、実際にリリース手順を実施して問題がないことを確認します。
前工程の変更管理プロセス(サービス設計と移行プロセス)にてユーザ受け入れ試験を未実施であれば、この活動で試験をします。
また、システムによっては検証環境がない場合もあるので、その場合は開発環境でリハーサルやユーザによる試験を実施します。

④展開計画・手順作成
展開計画・手順作成では、詳細なスケジュール作成や担当者への割り当てをします。

⑤周知、トレーニング
新機能に関する説明をユーザへ周知したり、他システム担当者と調整をしたりします。
必要に応じてサービスデスクと連携を取って対応します。
■主な内容
- ユーザ向け教育 : 新機能や変更点の説明会、マニュアル作成
- システム停止やユーザが必要な作業の周知 : 作業に伴うシステム停止や、ユーザでインストール作業が必要な場合の手順を周知
- 運用担当者向けトレーニング : 運用手順の説明、運用マニュアルの修正
- 他システム担当者との調整 : 実装のスケジュール詳細を説明
⑥展開
上で作成した展開計画・手順に従い、展開作業を実施します。
作業の際は実施者、掛かった時間、エビデンスを記録しておき、次回の参考にできるようにしておくと良いです。
まとめ
- リリースおよび展開管理の目的は、本番環境への影響を最小化、スムーズな実装。
- リリースおよび展開管理は、変更管理で承認されたサービスがリリースパッケージとして作成された時点でリリース及び展開管理を開始。
- 個々のコンポーネント(リリースユニット)をまとめたリリースパッケージとしてリリースを実施。
- リリース対象サービスを明確にし、スケジュールをガントチャートなどで詳細に管理。
- ユーザーや運用担当者への教育や、システム停止やインストール作業に関する周知を確実に実施。
- 展開計画に基づき展開作業を進め、実施者や掛かった時間、エビデンスを記録として残す。


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